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明治大学平和教育
登戸研究所資料館・訪問

明治大学平和教育登戸資料館
=2011/4/29、川崎市(1回目の訪問時に撮影)
裁断前の中国偽札
=2018/1/20
、川崎市・明治大学
米ドルの偽札
=2018/1/20
、川崎市・明治大学
ソ連の偽造パスポート
=2018/1/20
、川崎市・明治大学
 2018年1月20日、神奈川県川崎市の多摩区にある明治大学・生田キャンパスの明治大学平和教育登戸研究所資料館(開館2010年)を訪問しました。 
 登戸研究所(最終名称;第九陸軍技術研究所)とは、旧日本陸軍が秘密戦のための兵器や資材を、研究、開発、製造していた軍事施設です。
 秘密戦とは、防諜(スパイ防止)、諜報(スパイ活動)、謀略(破壊、攪乱、暗殺)、宣伝(人心の誘導)などで、秘密裏に特務機関員が実行し、戦果が秘密にされ、記録や歴史に残さない謀略です。
 現在、その跡地の約半分が明治大学・生田キャンパスとなり(1950年購入)、施設の一部が保存されています。その施設で唯一残った建物が、登戸研究所資料館となり平和教育に使われています。
 登戸研究所の主な任務は、1937年(昭和12年)開設当時の電波兵器、無線機材、宣伝機材なんどの研究・開発にはじまり(のちに第一科)、毒物、薬物、生物兵器、スパイ用品、風船爆弾(第二科)、偽札や偽造パスポート製造(第三科)、秘密兵器の量産(第4科)へと機能強化されました。
 最盛期(1994年)は、敷地11万坪、建物100棟余、技術将校、技師、技手などの幹部所員250名、一般の雇員や工員など、総勢1,000名の体制でした。
 研究過程や成果の実行や人体実験は、東京都中野区にあった陸軍中野学校で養成された工作員や、中国東北部(旧満州)にあった731部隊(関東軍防疫給水部本部)でした。
 登戸研究所、中野学校、731部隊は密接な関係だったのです。物づくりは登戸研究所、人づくりが中野学校ともいわれています。
 今回訪問で驚いたことは、偽札製造過程で、日本が香港占領時(1941年12月)に、本物の紙幣印刷機、原盤、資材などを没収して持ち帰り、登戸研究所で「本物」を印刷していたことです。紙幣用紙も、偽札で中国から買っていました。 
 偽札製造工程には、「古札仕上げ」がありました。ピン札は疑われるので、流通している札に見せるため、もみくちゃにして古札にする作業です。
 偽札の製造・散布は、インフレを揺動する経済攪乱と、現地での物資購入が狙いでした。
 だが、偽札が「正常」に流通し、それによる混乱にならなかったのです。 
 偽札の運搬や散布には、工作員による秘密ルート、ダミー商社、陰の組織などを使っていました。
 それらの関係者は、偽札で軍需物資を買って軍に売るなど大もうけをしました。
 そして、偽札で貴金属を買いあさったといわれます。そのマネーが、戦後の保守政党の立ち上げ資金になったといわれています。
 偽札製造は、中国紙幣のほかに、米ドルやインドルピーもありました。パスポート偽造もしていました。
 終戦の日(1945年8月15日)の午前中に、陸軍省軍事科から登戸研究所の全て書類や実験器具類などを焼却・埋設処分の命令が極秘に出されました。作業は徹底的に実施され、登戸研究所の資料や器材などが消滅しました。
 米軍の日本本土へ上陸は8月28日横浜に、マッカサーが8月30日に厚木飛行場で、日本と連合国との降伏文書調印は、9月2日にミズーリ号で行われ、11月30日に陸軍省・海軍省の廃止ですから、証拠隠滅の時間は十分にあったのです。
 しかし、研究所の所員は戦犯に問われず、人材とノウハウは米軍に引き継がれ、偽札製造などで朝鮮戦争やベトナム戦争に生かされます。
 謀略の研究・開発や秘密戦は。戦時や平時に関わりなく行われる闇の歴史です。
 時は過ぎ、1980年代の反核・平和運動の高まりのなか、地域の人たちや高校生平和ゼミナールの学生たちによる、登戸研究所の発掘調査、保存、公開の運動が大きく進展しました。
 とくに、高校生の純粋な聞き取り調査に、元研究所の関係者が心を開き、秘密を明かして不再戦を後世に伝える決断をされたそうです。そして、明治大学平和教育登戸研究所資料館が生まれました。
 今回の訪問は、2011年に次ぐ2回目でした。契機は、京都在住の俊正和寛さんが、父の従軍日記「俊正 正利の従軍日記」原本を、資料館に寄贈して展示されたことです。縁あって、正寛さんや友人などとご一緒に訪問し、山田朗館長(文学部教授)から詳しい案内を頂きました。
 資料館の展示物は、前回より資料が増え、展示方法も大幅に改善され、秘密戦の謀略の全体像が分かりやすくなっていました。適切なガイドブック(A4版30頁)も、発行(無料)されました。
https://www.meiji.ac.jp/noborito/

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